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創造の最前線から

スターキャットが東海地方で初めて提供した、NR-DC運用によるローカル 5G の実証環境とは

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ローカル5Gの実証施設として昨年7月にオープンした「NAGOYA LOCAL5G LAB」は、2023年3月より国内外を通じて先行事例がほとんどない超高速かつ安定した通信を実現するNR-DCの運用をスタートしました。今回は同施設を運営するスターキャット・ケーブルネットワーク(以下、スターキャット)のH.Mさんにインタビューを行い、NR-DCの導入背景やオープンから一年が経った「NAGOYA LOCAL5G LAB」で行われている実証実験の事例、今後のローカル5Gの技術展望などについて詳しくお聞きしました。

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H.M

スターキャット・ケーブルネットワーク株式会社
営業本部 法人営業部 法人営業2グループ 担当課長

新卒で入社したIT企業ではソフトウェアエンジニアとしてカーナビのデータ整備システムや画像検索システムの開発を担当。2006年にスターキャットへ転職。入社後は情報システム部門、業務管理部門、経営企画部門、営業企画部門、コンシューマ営業部門に在籍し、新規事業の立ち上げやWeb広告、CRM導入プロジェクト、営業部門リーダーなど幅広い業務を担当。2021年4月に現部門へ異動し、同年10月よりローカル5G事業の担当に着任。

施設のオープン以前から、通信速度が速く遅延の少ないミリ波の活用を検討していた

──まずはスターキャットが20227月に「NAGOYA LOCAL5G LAB」を立ち上げられた目的や経緯について教えてください。

H.M ) 

以前からローカル5Gの可能性に注目していた私たちは、2021年の法人営業部設立を機に「法人や行政のお客さまとローカル5Gの利活用で共創できる場を作ろう」という目標を掲げ、実証施設の場所探しからスタートしました。当初からオープンな立地を検討していたところ、名古屋市経済局からフィールド活用型社会実証支援事業「Hatch Meets」をご紹介いただき、同事業を通じて「なごのキャンパス」にローカル5Gの実証施設「NAGOYA LOCAL5G LAB」を整備するプロジェクトが走り出し、昨年7月のカットオーバーに至っています。

──20233月からはSub6とミリ波のNR-DC運用によるローカル 5G の実証環境の提供もスタートされたと伺っています。NR-DC運用については、いつ頃から検討されていたのでしょうか?

H.M ) 

実は「NAGOYA LOCAL5G LAB」の検討段階から通信速度が速く遅延が少ないミリ波の活用を見据えて動いていました。しかし、私たちがローカル5Gの実証施設を検討し始めた当時は、ミリ波単独でのローカル5Gを実現する機器や設備が市場に存在しなかったのです。そのような状況の中、唯一サムスン電子さんはミリ波を活用したローカル5Gのロードマップを明確にされていました。サムスン電子さんの製品に実装される予定だったNR-DCという技術は、ローカル5Gで使える見ミリ波とサブ6という2つの周波数帯をそれぞれ別々に使うのではなく両方同時に使うことで、超高速を実現できる上にそれぞれの周波数の特性による弱点を補完し合う魅力的な技術でした。よって、我々はNR-DCを見据えた環境構築を進めてきたのです。

──NR-DC環境の構築について苦労されたことはありますか?

H.M ) 

NR-DCについては国内どころか海外での導入・実証事例もほとんどなく、すべてが新しい試みとなったため、さまざまな苦労がありました。たとえばミリ波の周波数帯域は28.2GHz~29.1GHzと非常に高いため、ちょっとした遮蔽物があるだけでも電波が届きませんし、速度の測定だけでも困難を極めました。また、日本の電波法に適応した機器の選定にも時間が掛かりました。当初、NR-DC については2022年12月からスタートする予定でしたが、このようなさまざまなハードルをクリアする必要があっため、約3カ月の追加検討を重ねた上で2023年3月にリリースすることができました。

「なごのキャンパス」の地の利を活かした、さまざまな実証実験事例

──「NAGOYA LOCAL5G LAB」では、これまでにどのような実証実験が行われたのでしょうか? このオープンラボならではの特徴的な事例などがあれば教えてください。

H.M ) 

工場内で荷物を運ぶようなAGV(無人搬送車)の実証実験が特徴的と言えるかもしれません。私たちも知らなかったのですが、今回持ち込んだAVGは比較的小型でしたがそれでも約500kgの重さがあり、搬入にはトラックからクレーンを使う必要がありました。こういった大型機器を検証する場合、ビルの一室にあるようなオープンラボでは搬入が困難で、走行させるための広さの確保も難しいでしょう。しかし、「なごのキャンパス」の敷地を活用できる当社のラボであれば「体育館を工場に見立てた実証実験ができるかもしれない」ということで、メーカーさんからご相談をいただきました。実際には体育館の床に板を敷くなどの養生する下準備が必要となりましたが、無事に実験を終えることができました。

──広い校庭や体育館もある小学校跡地を活用した「なごのキャンパス」の地の利を活かした実証実験ができるということですね。

H.M ) 

本当にそうですね。同じような理由でドローン関連の実証実験が行われることもあります。ドローンにローカル5Gの無線機器を載せて屋外で通信することは電波法上、現時点では特別な手続きが必要です。ですが、「なごのキャンパス」の体育館は屋内なのでそういった手続きなくドローンに無線機器を載せて通信させることができます。また、AGVやドローンの他にはコミュニケーションロボットや自動車などでの実験事例があるほか、最近では企業さまだけでなく大学からもご相談をいただく機会が増えています。

ケーブルテレビ会社がローカル5Gを手掛ける強みとは

──今後のローカル5Gの技術展望についてどのようにお考えでしょうか?

H.M ) 

ローカル5Gはまだまだ黎明期にある技術です。私たちが3月からスタートしているNR-DCがまさにそうした段階だったように、仕様や構想はあるものの、それに対応する機器や製品が現状では出揃っていないのです。今後は構想段階にあるさまざまな仕様が実現化され、機器や製品が登場する成長期に入っていくと考えており、一技術者として非常に楽しみにしているところです。

──ケーブルテレビ会社がローカル5Gを手掛ける強みは、どこにあると考えていますか?

H.M ) 

ローカル5Gは無線の技術ですが、無線を手掛けるためには有線の設備・技術が不可欠となります。たとえば電波を発射するアンテナまでの区間には有線の光ファイバーを敷いておく必要がありますが、当社はすでに名古屋市内を中心とする管内エリアに光ファイバー網を有しており、それらのインフラを活用するための知見も持っています。無線に関するノウハウだけでなく、その無線を支えるためのアンテナや光ファイバーなどの物理的な機器・設備、さらにはその上で動くアプリケーションに関する知見なども踏まえたトータルなサポートサービスをご提供できることは、私たちの大きな強みになっていると感じます。

──最後になりますが、スターキャットのローカル5G事業に興味を持っている方々へのメッセージをお願いします。

H.M ) 

先ほどもお話しした通りローカル5Gはスタートしたばかりの技術です。現在のタイミングではまだまだニッチな技術ということになりますが、ニッチかつ成長中の技術に触れておくことで、将来的にこの技術領域の第一人者になれる可能性があります。当然、技術者のキャリアにとって大きなアドバンテージになると思いますので、ぜひ積極的にチャレンジしてください。

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